季刊誌 光明 第224号「墓石」より抜粋引用

亡くなった人のために墓石を建てることは、いつからはじまったのでしょうか。

おはか

遠い昔、埋葬したところには石が置かれました。野獣に遺体を掘り起こされないようにする用心ですが、死者の霊を恐れたことにも由来します。

親しい人が亡くなると、残されたものは、相反する二つの感情をもちます。一つは、故人に寄せる追慕の気持ちであり、もう一つは、変わり果てた死者に抱く恐怖心です。

死者の霊は生きているものに災いをもたらすと信じられていました。そこで石・火・水・草木・穀物・果実・灰・塩などを用いて、死霊の危害を除く儀礼が、盛んに行われたのです。石は、石がもつ霊的な力を期待して、埋葬地の上に置かれ、死者に石を抱かせて葬る抱石葬にも使われました。

文明が発達すると、死霊への恐怖よりも亡き人への愛情が大きくなりました。すると、かつては死者への恐れから用いた石や水、草木は、親愛を表す意味で使われるようになりました。墓所の石塔もそうした歴史のなかで生まれたものといえるでしょう。