光明第215号より抜粋
 あの人に比べて私はダメ(まだまし)、あの家と比べて家はまだまだ(いいほう)と、他と比べて自分の位置を確認する人は少なくありません。しかし、他と比べて喜んでも、悲しんでも、安心しても、残念ながら、ほとんど役に立ちません。
●他人を傷つけ、己を失う
平穏 私が好きな言葉に「比べて喜ぶと人を傷つける。比べて悲しむと己を失う」があります。
 テストで90点を取った人が80点の人と比べて「勝った」と喜べば、相手は不愉快になるでしょう。つまり、相手を傷つけているのです。また、90点の人が「100点の人に負けた」とガッカリすることもあります。
 先生や審査員は順序をつけますが、本人たちによって、順位はどうでもいいことなのです。これは成績だけでなく、財産や才能などにもいえることでしょう。
 仏教も、自分の心を乱すことを他人と比べずに一つ一つ解決して、心おだやかな境地を目指す教えです。
●昔の自分と今の自分は比べてもいい
 その中でも、比べても良いものは、過去の自分と今の自分。昔の自分はできなかったことができるようになった。若い時は些細なことでイライラしていたのに、年をとったら「そんなものさ」と鷹揚に構えていられるようになった・・・などは、比べてもいいのです。
 もちろん、昔より劣ってしまったこともあるでしょう。年を重ねて気力も体力も記憶力も落ちたとうなだれることもありますが、劣った部分を凌駕して余りあるほど成長したこともあるでしょうから、嘆くには及びません。